ひとり、ふたりと人が去り、最後は7人でテーブルを囲む。
ギターを抱えたのりまきを中心にそれぞれの話に花が咲く。
ひと仕事を終えたマスターは、カウンター越しにタバコを煙らせている。

ライブが静かに終わっても、のりまきは歌い続ける。
ギターを爪弾きながら、話しては歌い、歌ってはまたみんなと話す。

 時代の波に飲まれて、疲れきった夜
 友達と騒いで 銀の河
 ――「銀の河」より

昔、のりまきに曲を付けてもらった歌。
歌詞に手を加えて、綺麗なバラードに仕上げてくれた。
その歌を小さな輪の中で、彼がさらりと歌う。
いつの間にか、時計の針は午前1時を過ぎ、
いつの間にか、のりまきは30曲余りを歌いきった。

手作りの案内の最後にこんな言葉が書いてある。
 
 金のためではなく、
 歌いたいからただ歌う。
 面白がってくれ、おつきあいいただき、
 どうもありがとう。

店を出ると雨、みんなでふらふらと真夜中の街を歩く。
もう電車はない。
今回も始発まで、カラオケ大会になりそうだ。

「はぶ、帰るだろ」
のりまきには、いつも心を読まれてきた。
そんな彼に、時に頷き、時に反発し、
ずっと面白がっている。

【おわり】

コメント

naochan
naochan
2008年3月28日18:52

素敵な夜をのりまきさんの歌を一緒に聞いているような
そして、お話の輪に参加しているような錯覚に落ちるような
3章でした。

羨ましいようなお仲間ですね。
のりまきさんの歌、聴いてみたくなりました。

メイ
メイ
2008年3月28日21:16

生涯、面白がって付き合える仲間達。。。

宝物って、そうそう簡単に手に入るものではないからこそ、宝物なのでしょうね。

羽生遊
羽生遊
2008年3月29日11:56

naochanさんへ
長い文章を最後まで読んで戴き、ありがとうございます。
のりまきのライブは宴会の延長のような心地良さがあって、
誰もが気軽に楽しめる雰囲気があります。
横浜まではかなり遠いですが、機会があったら是非!

ライブ中に演奏した「そこを飛び出せ」という歌が、
彼の3月21日のブログにアップされています。
ダウンロードまでちょっと時間がかかりますが、
お時間がある時にでも聴いてみて下さい。

「王様の耳はロバの耳」
http://blog.livedoor.jp/norimaki/

羽生遊
羽生遊
2008年3月29日12:01

メイさんへ
駄文にお付き合い戴き、ありがとうございます。
のりまきとは大学時代からの友達なんですが、
最初の頃はうっとうしくて(笑)。
不思議なものです……
それがずっとの付き合いですからね。

ライブに集まる仲間は、その日限定の友達が多いのですが、
本当に面白がって付き合える仲間ばかりです。
メイさんのおっしゃるように、
これからもそんな宝物を大切にしようと思います。

naochan
naochan
2008年3月30日17:46

聞かせていただきました。のりまきさんの歌声。

音楽が何となくですけど、ボサノバっぽい感じでした。
なんだかその場の空気まで運んでくれました。
ありがとうございました。

羽生遊
羽生遊
2008年4月1日10:15

naochanさんへ
聴いて戴き、のりまきも喜んでいると思います。
録音のためでない音は、やはり違うようですね。
ライブならではの楽しみはnaochanさんも、
実感としてお分かりですからね。

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