歌いたいから・最終章
2008年3月27日 歌いたいから コメント (6)ひとり、ふたりと人が去り、最後は7人でテーブルを囲む。
ギターを抱えたのりまきを中心にそれぞれの話に花が咲く。
ひと仕事を終えたマスターは、カウンター越しにタバコを煙らせている。
ライブが静かに終わっても、のりまきは歌い続ける。
ギターを爪弾きながら、話しては歌い、歌ってはまたみんなと話す。
時代の波に飲まれて、疲れきった夜
友達と騒いで 銀の河
――「銀の河」より
昔、のりまきに曲を付けてもらった歌。
歌詞に手を加えて、綺麗なバラードに仕上げてくれた。
その歌を小さな輪の中で、彼がさらりと歌う。
いつの間にか、時計の針は午前1時を過ぎ、
いつの間にか、のりまきは30曲余りを歌いきった。
手作りの案内の最後にこんな言葉が書いてある。
金のためではなく、
歌いたいからただ歌う。
面白がってくれ、おつきあいいただき、
どうもありがとう。
店を出ると雨、みんなでふらふらと真夜中の街を歩く。
もう電車はない。
今回も始発まで、カラオケ大会になりそうだ。
「はぶ、帰るだろ」
のりまきには、いつも心を読まれてきた。
そんな彼に、時に頷き、時に反発し、
ずっと面白がっている。
【おわり】
ギターを抱えたのりまきを中心にそれぞれの話に花が咲く。
ひと仕事を終えたマスターは、カウンター越しにタバコを煙らせている。
ライブが静かに終わっても、のりまきは歌い続ける。
ギターを爪弾きながら、話しては歌い、歌ってはまたみんなと話す。
時代の波に飲まれて、疲れきった夜
友達と騒いで 銀の河
――「銀の河」より
昔、のりまきに曲を付けてもらった歌。
歌詞に手を加えて、綺麗なバラードに仕上げてくれた。
その歌を小さな輪の中で、彼がさらりと歌う。
いつの間にか、時計の針は午前1時を過ぎ、
いつの間にか、のりまきは30曲余りを歌いきった。
手作りの案内の最後にこんな言葉が書いてある。
金のためではなく、
歌いたいからただ歌う。
面白がってくれ、おつきあいいただき、
どうもありがとう。
店を出ると雨、みんなでふらふらと真夜中の街を歩く。
もう電車はない。
今回も始発まで、カラオケ大会になりそうだ。
「はぶ、帰るだろ」
のりまきには、いつも心を読まれてきた。
そんな彼に、時に頷き、時に反発し、
ずっと面白がっている。
【おわり】
夜がどんどん更けていくにつれ、
のりまきと周りの人たちとの距離も近づいていく。
もうこうなると、久しぶりも初対面もない。
余裕のない日々の足取り
ストレスで重くなる
音楽よ
傷ついた魂を暖かく包み込み給え
――「ミッキーちゃん」より
思わず自然にこぼれる 笑顔 嬉しい
なんでもないようなメロディ、
やさしいリズムに救われるよ 素直に
ねぇ本当だよ
――「STYLE」より
音楽の力ってなんだろう――
ちょっと深く考えてもみた。
でも、そんなことを考えるのは止めた。
今の気分が良ければ、それでいい。それだけで十分だ。
突然、のりまきの力強い声が聞こえた。
僕だけかもしれない。「約束」という歌。
歌声が風に消される
引き返すことできるかな?
約束をもう忘れてる
僕らは何をしているんだろう
――「約束」より
歌って、歌詞だけじゃないんだよな――。
昔、のりまきに言われた言葉を思い出した。
「約束」は言葉よりも、彼の声が僕の中に届いていた。
【つづく】
のりまきと周りの人たちとの距離も近づいていく。
もうこうなると、久しぶりも初対面もない。
余裕のない日々の足取り
ストレスで重くなる
音楽よ
傷ついた魂を暖かく包み込み給え
――「ミッキーちゃん」より
思わず自然にこぼれる 笑顔 嬉しい
なんでもないようなメロディ、
やさしいリズムに救われるよ 素直に
ねぇ本当だよ
――「STYLE」より
音楽の力ってなんだろう――
ちょっと深く考えてもみた。
でも、そんなことを考えるのは止めた。
今の気分が良ければ、それでいい。それだけで十分だ。
突然、のりまきの力強い声が聞こえた。
僕だけかもしれない。「約束」という歌。
歌声が風に消される
引き返すことできるかな?
約束をもう忘れてる
僕らは何をしているんだろう
――「約束」より
歌って、歌詞だけじゃないんだよな――。
昔、のりまきに言われた言葉を思い出した。
「約束」は言葉よりも、彼の声が僕の中に届いていた。
【つづく】
「好きなことを見つけ やり続けて見せろ」
「好きな人と出会い 信じ続けてみろ」
人はどうやらその人らしく生きてかないと壊れてしまう
――「コトダマ」より
のりまきの親友のサダちゃんが少し遅れて店に来た。
昔、同じバンドを組んでいた音楽仲間。
のりまきはアマ、サダちゃんはプロ、
その差って何――野暮な疑問がふつふつと沸く。
それぞれ道に違いこそあれ、二人は音楽に拘って生きている。
のりまきの歌を聴くサダちゃんの横顔がその答えを語っている。
休憩中、「どうやってメロディができるの」と
のりまきとサダちゃんに素人丸出しの質問をする。
「コードだよ」と2人がぴったりとハモる。
僕はふむふむと半分納得したふりをする。
僕らを繋いでいるものは?
二人を結んでいるものは?
時間じゃない 言葉じゃない
目に見えるものが全てじゃないのさ
――「Forever Friends」より
ライブの夜は、まだまだ続く。
【つづく】
「好きな人と出会い 信じ続けてみろ」
人はどうやらその人らしく生きてかないと壊れてしまう
――「コトダマ」より
のりまきの親友のサダちゃんが少し遅れて店に来た。
昔、同じバンドを組んでいた音楽仲間。
のりまきはアマ、サダちゃんはプロ、
その差って何――野暮な疑問がふつふつと沸く。
それぞれ道に違いこそあれ、二人は音楽に拘って生きている。
のりまきの歌を聴くサダちゃんの横顔がその答えを語っている。
休憩中、「どうやってメロディができるの」と
のりまきとサダちゃんに素人丸出しの質問をする。
「コードだよ」と2人がぴったりとハモる。
僕はふむふむと半分納得したふりをする。
僕らを繋いでいるものは?
二人を結んでいるものは?
時間じゃない 言葉じゃない
目に見えるものが全てじゃないのさ
――「Forever Friends」より
ライブの夜は、まだまだ続く。
【つづく】
店の外からギターを抱えるのりまきが見えた。
「まだ練習中だから」
全くギターの似合う男だ。一見してまず思う。
店にはいつもの顔と初めての顔、10数名。
カウンターの奥でマスターが軽く手を上げる。
マスターは「何の変哲もない店だから」という。
そんな店だから、変哲なのりまきには相応しい。
「マスター、ビール」と頼むと間もなく、
のりまきの3年半ぶりのライブが始まった。
気をつけてるのは バランス
気をつけてるようじゃ マダマダ
――「母なる偉大なおっぱい」より
歌詞を見ながら聴いている人、
ちょっとおしゃべりしながら聴いている人、
のりまきは気にしながら、気にしていない。
「偏屈は偏屈っていわれるのが嬉しいんだよね」と
のりまきとは昔からの友達の、ちーさん。
「偏屈は偏屈でも重偏屈だよな」と僕が付け加える。
音楽を聴きながら笑い、
笑いながら音楽を聴く時がゆっくりと流れる。
懐かしい顔ぶれが揃っている
温かな笑顔を浮かべ 待ってる
痛みさえも生きている証
――「痛み」より
宴会なのか、ライブなのか、のりまきのライブはいつもこんな風だ。
【つづく】
「まだ練習中だから」
全くギターの似合う男だ。一見してまず思う。
店にはいつもの顔と初めての顔、10数名。
カウンターの奥でマスターが軽く手を上げる。
マスターは「何の変哲もない店だから」という。
そんな店だから、変哲なのりまきには相応しい。
「マスター、ビール」と頼むと間もなく、
のりまきの3年半ぶりのライブが始まった。
気をつけてるのは バランス
気をつけてるようじゃ マダマダ
――「母なる偉大なおっぱい」より
歌詞を見ながら聴いている人、
ちょっとおしゃべりしながら聴いている人、
のりまきは気にしながら、気にしていない。
「偏屈は偏屈っていわれるのが嬉しいんだよね」と
のりまきとは昔からの友達の、ちーさん。
「偏屈は偏屈でも重偏屈だよな」と僕が付け加える。
音楽を聴きながら笑い、
笑いながら音楽を聴く時がゆっくりと流れる。
懐かしい顔ぶれが揃っている
温かな笑顔を浮かべ 待ってる
痛みさえも生きている証
――「痛み」より
宴会なのか、ライブなのか、のりまきのライブはいつもこんな風だ。
【つづく】