江ノ島フリッパーズ始動―「楽しんで勝つ」
2013年5月26日 江ノ島フリッパーズ―楽しんで勝つ コメント (4)
開幕戦を終え、集合写真のシャッターを押そうとした時、O氏の涙腺は緩まずにはいられなかった。
チームの発足、メンバーの募集、練習日と練習場の確保……そしてメンバーたちに対する自主的運営への誘い。
O氏夫妻たちが立ち上げに関わった「江ノ島フリッパーズ」が今春から神奈川県の社会人サッカーリーグに参戦する。主なメンバーは県下の高校を3月に卒業した20名あまり。中には、昨年の関東大会で準優勝した者もいれば、県下のトップリーグで活躍した者もいる。それでも、彼らは大学の部活でもサークルでもなく、アマチュアの社会人チームをゼロから創り上げることに拘った。
フリッパーズの世話役O氏が、チームの代表を務める妻と共に思いを込めて作ったチーム理念にはこんなことが書かれている。
「ひとりひとりがカッコよくなろう」
「子どもたちの目標になるオトナになろう」
「僕たちが、僕たちのやり方を楽しもう」
そして最後にはこんな一文がある。
「楽しんで勝つ」
神奈川の社会人リーグは1部から3部まで全141チームで構成されていて、新参チームは当然、3部リーグからの参戦になる。このチームには小学生、中学生の頃からO氏夫妻を慕うメンバーも多く、その理念のもとに声を掛け合い、徐々にメンバーも増えていった。
Jリーグが発足して20年、フリッパーズのメンバーが生まれた時には、既に日本にもプロリーグが存在していた。当然のようにサッカーは急速に普及し、プロサッカー選手への夢を持つ子供たちも増えた。その反面、極端な勝利至上主義や選手の差別化、行き過ぎた指導による弊害など、問題点もまだ残る。
そんな意味でも、フリッパーズの存在意義は大きいと思う。高校サッカーの厳しさの中で揉まれてきたメンバーが、フリッパーズの「楽しんで勝つ」という理念のもとにどれだけのことがやれるのか――想像しただけで胸躍る気持ちになってしまう。
5月19日の開幕戦、フリッパーズの白いアウェイのユニフォームが踊っていた。
ポゼッションをテーマにした3-6-1の布陣で挑むフリッパーズは攻守への切り替えの意識も高く、センター、サイドとボールを散らし、チームが意志を持って連動している。まるで自分たちの思いを繋ぐようにボールを回し、失敗しながらも、ゴールを目指している。
ゴールキーパーも前半と後半で交代、定められた上限ぎりぎりの交代メンバーをフリッパーズは使い切った。このチームにはレギュラーもサブもない。みんながどれだけ楽しんでやれたかが、勝利を超えたチームのバロメーターなのだろう。
7対2、フリッパーズは開幕戦をものにした。その結果よりももっと大切な何かを、メンバーそれぞれがこの日に掴んだはずに違いない。
「まだまだ課題はあるし、これからが大変だと思います」
試合後のO氏の言葉は紛れもない本心だろう。それでも開幕戦を終え、若者たちを見つめる彼の眼差しは、どこまでもやわらかく、どこまでも澄み切っていた。
チームの発足、メンバーの募集、練習日と練習場の確保……そしてメンバーたちに対する自主的運営への誘い。
O氏夫妻たちが立ち上げに関わった「江ノ島フリッパーズ」が今春から神奈川県の社会人サッカーリーグに参戦する。主なメンバーは県下の高校を3月に卒業した20名あまり。中には、昨年の関東大会で準優勝した者もいれば、県下のトップリーグで活躍した者もいる。それでも、彼らは大学の部活でもサークルでもなく、アマチュアの社会人チームをゼロから創り上げることに拘った。
フリッパーズの世話役O氏が、チームの代表を務める妻と共に思いを込めて作ったチーム理念にはこんなことが書かれている。
「ひとりひとりがカッコよくなろう」
「子どもたちの目標になるオトナになろう」
「僕たちが、僕たちのやり方を楽しもう」
そして最後にはこんな一文がある。
「楽しんで勝つ」
神奈川の社会人リーグは1部から3部まで全141チームで構成されていて、新参チームは当然、3部リーグからの参戦になる。このチームには小学生、中学生の頃からO氏夫妻を慕うメンバーも多く、その理念のもとに声を掛け合い、徐々にメンバーも増えていった。
Jリーグが発足して20年、フリッパーズのメンバーが生まれた時には、既に日本にもプロリーグが存在していた。当然のようにサッカーは急速に普及し、プロサッカー選手への夢を持つ子供たちも増えた。その反面、極端な勝利至上主義や選手の差別化、行き過ぎた指導による弊害など、問題点もまだ残る。
そんな意味でも、フリッパーズの存在意義は大きいと思う。高校サッカーの厳しさの中で揉まれてきたメンバーが、フリッパーズの「楽しんで勝つ」という理念のもとにどれだけのことがやれるのか――想像しただけで胸躍る気持ちになってしまう。
5月19日の開幕戦、フリッパーズの白いアウェイのユニフォームが踊っていた。
ポゼッションをテーマにした3-6-1の布陣で挑むフリッパーズは攻守への切り替えの意識も高く、センター、サイドとボールを散らし、チームが意志を持って連動している。まるで自分たちの思いを繋ぐようにボールを回し、失敗しながらも、ゴールを目指している。
ゴールキーパーも前半と後半で交代、定められた上限ぎりぎりの交代メンバーをフリッパーズは使い切った。このチームにはレギュラーもサブもない。みんながどれだけ楽しんでやれたかが、勝利を超えたチームのバロメーターなのだろう。
7対2、フリッパーズは開幕戦をものにした。その結果よりももっと大切な何かを、メンバーそれぞれがこの日に掴んだはずに違いない。
「まだまだ課題はあるし、これからが大変だと思います」
試合後のO氏の言葉は紛れもない本心だろう。それでも開幕戦を終え、若者たちを見つめる彼の眼差しは、どこまでもやわらかく、どこまでも澄み切っていた。