「砂の器」と「罪の境界」
2020年6月14日 読書 コメント (3)今、松本清張氏の「砂の器」(新潮文庫)を再読しています。
読んだ方もたくさんいると思いますが、
推理小説でありながら社会小説でもあり、いくつかの地方や都会の街角を、
自分自身が歩き回ってる感覚にさせてくれます。
文章の重さ、言葉の重さも、ずしりずしりと伝わってきます。
「罪の境界」は神奈川新聞の連載小説で6月からスタートしました。
僕は連載小説なるものを一度も読んだことはなかったのですが、
今回はテーマに興味があり、日々読み続けてみようと思いました。
作者の薬丸岳氏が不条理な犯罪の事後を描く連載、詳細は省きますが、
「絶望の淵からの希望」を描くと薬丸氏は語っています。
作者が伝えようとしていることを感じ取るのは難しいかもしれません。
それでも、解釈は人それぞれであって良いし、違う環境で過ごし、
「個」として「他」との関係性の中で生き続ける僕たちの感性は、
十人十色で当たり前のような気がします。
読んだ方もたくさんいると思いますが、
推理小説でありながら社会小説でもあり、いくつかの地方や都会の街角を、
自分自身が歩き回ってる感覚にさせてくれます。
文章の重さ、言葉の重さも、ずしりずしりと伝わってきます。
「罪の境界」は神奈川新聞の連載小説で6月からスタートしました。
僕は連載小説なるものを一度も読んだことはなかったのですが、
今回はテーマに興味があり、日々読み続けてみようと思いました。
作者の薬丸岳氏が不条理な犯罪の事後を描く連載、詳細は省きますが、
「絶望の淵からの希望」を描くと薬丸氏は語っています。
作者が伝えようとしていることを感じ取るのは難しいかもしれません。
それでも、解釈は人それぞれであって良いし、違う環境で過ごし、
「個」として「他」との関係性の中で生き続ける僕たちの感性は、
十人十色で当たり前のような気がします。
「心の傷を癒すということ」から
2020年4月6日 読書 コメント (4)今、僕たちは「いかに生きるのか」を問われているのかもしれません。
当たり前のことができずに、当たり前の思いを遂げられずに、
日常にもがいている人たちもたくさんいると思います。
もちろん、僕もそのひとりです。
「心の傷を癒すということ」——
阪神淡路大震災後の精神医療活動を描いたノンフィクション。
今に通ずることは何かないかと読んでいる本です。
前回、naochanのメッセージへの返信にも少し触れさせて頂きました。
少し長くなりますが、一部をご紹介させて頂きます。
——いずれにせよ、死者、被災者の人数といい、被害を受けた地域の広さといい、こんな大規模な都市災害は、これまでの災害精神医学の事例にはなかった。PTSD(心的外傷後ストレス障害)であっても、原因は単純ではない。私たちの体験しているのは、大規模な都市機能の崩壊に巻き込まれた〈心の傷つき〉なのである。
その意味で〈心のケア〉の問題は、たんに精神医療や精神保健の専門機関にのみ任された役割ではない。症状の重くなった人は病院を訪れるけれども、その背景には、病院にこそ来ないが、災害ストレスが心の傷になった人が何十万人もいる。心のケアは被災者全体に必要なのであり、そのためには被災者と接する業務を行っているあらゆる機関が、心のケアに自覚的であるべきだろう。
大げさだが、心のケアを最大限に拡張すれば、それは住民が尊重される社会を作ることではないか。それは社会の「品格」にかかわる問題だと私は思った。復興の中では補償や財産やローンなど、難しい問題が続出するだろう。ただでさえ、もめやすい事例である。そこに必ず不公平感が発生してくるだろう。納得のいかない結果に終わった人たちは、自分が尊重されていないと感じるに違いない。
〈心のケア〉がたんなるかけ声で終わらないためにも、具体的な方法論が今後ますます必要とされるのである。
——「心の傷を癒すということ」(安克昌氏著・角川ソフィア文庫)・第I部 震災直後の心のケア活動より引用
今、何を為すべきか、今、これから社会はどうあればいいのか。
僕たちはやはり「心」を試されているようです。
当たり前のことができずに、当たり前の思いを遂げられずに、
日常にもがいている人たちもたくさんいると思います。
もちろん、僕もそのひとりです。
「心の傷を癒すということ」——
阪神淡路大震災後の精神医療活動を描いたノンフィクション。
今に通ずることは何かないかと読んでいる本です。
前回、naochanのメッセージへの返信にも少し触れさせて頂きました。
少し長くなりますが、一部をご紹介させて頂きます。
——いずれにせよ、死者、被災者の人数といい、被害を受けた地域の広さといい、こんな大規模な都市災害は、これまでの災害精神医学の事例にはなかった。PTSD(心的外傷後ストレス障害)であっても、原因は単純ではない。私たちの体験しているのは、大規模な都市機能の崩壊に巻き込まれた〈心の傷つき〉なのである。
その意味で〈心のケア〉の問題は、たんに精神医療や精神保健の専門機関にのみ任された役割ではない。症状の重くなった人は病院を訪れるけれども、その背景には、病院にこそ来ないが、災害ストレスが心の傷になった人が何十万人もいる。心のケアは被災者全体に必要なのであり、そのためには被災者と接する業務を行っているあらゆる機関が、心のケアに自覚的であるべきだろう。
大げさだが、心のケアを最大限に拡張すれば、それは住民が尊重される社会を作ることではないか。それは社会の「品格」にかかわる問題だと私は思った。復興の中では補償や財産やローンなど、難しい問題が続出するだろう。ただでさえ、もめやすい事例である。そこに必ず不公平感が発生してくるだろう。納得のいかない結果に終わった人たちは、自分が尊重されていないと感じるに違いない。
〈心のケア〉がたんなるかけ声で終わらないためにも、具体的な方法論が今後ますます必要とされるのである。
——「心の傷を癒すということ」(安克昌氏著・角川ソフィア文庫)・第I部 震災直後の心のケア活動より引用
今、何を為すべきか、今、これから社会はどうあればいいのか。
僕たちはやはり「心」を試されているようです。
ある男として「ある男」を読む
2019年2月20日 読書 コメント (6)「ある男」平野啓一郎氏著 文藝春秋――
誰でも自分の人生に影響を受ける本が何冊かはあると思います。
最近、立て続けに2回読んだ「ある男」はそんな作品のひとつでした。
物語は「ある男」の足跡を辿りながら、綴られていきます。
ただ、この作品に出てくる登場人物は、自分の周りにいる誰かであり、
また、読者にとっても、どこか自分に似た人物がいるように思います。
主人公の男はある事故で命を落とします。
その男を愛していた妻は、その後、夫が全く別の人物だったことを知ります。
物語は「ある男」の過去を追い、取り巻く社会や人物たちに光を当て、
否が応でも、読んでいる自分をその物語へと誘います。
自分とは誰なのか、自分とは何なのか、どう生きようとしているのか――
人に寄り添うこと、人を理解しようとすること、人を愛すること。
そこから、自分自身へと思いを向かわせることの大切さを、
「ある男」から教えられたような気がします。
誰でも自分の人生に影響を受ける本が何冊かはあると思います。
最近、立て続けに2回読んだ「ある男」はそんな作品のひとつでした。
物語は「ある男」の足跡を辿りながら、綴られていきます。
ただ、この作品に出てくる登場人物は、自分の周りにいる誰かであり、
また、読者にとっても、どこか自分に似た人物がいるように思います。
主人公の男はある事故で命を落とします。
その男を愛していた妻は、その後、夫が全く別の人物だったことを知ります。
物語は「ある男」の過去を追い、取り巻く社会や人物たちに光を当て、
否が応でも、読んでいる自分をその物語へと誘います。
自分とは誰なのか、自分とは何なのか、どう生きようとしているのか――
人に寄り添うこと、人を理解しようとすること、人を愛すること。
そこから、自分自身へと思いを向かわせることの大切さを、
「ある男」から教えられたような気がします。
三木清・人生論ノートより
2018年6月25日 読書 コメント (2)数年前に勢いで買った三木清の「人生論ノート」
勉強不足の自分にはかなり難解で苦労しながらちびちびと読んでいます。
それでも、少しはなるほどと納得するような文章に出会うこともあります。
「幸福について」より引用——
幸福は人格である。ひとが外套を脱ぎすてるようにいつでも気楽にほかの幸福は脱ぎすてることのできる者が最も幸福な人である。しかし真の幸福は、彼はこれを捨て去らないし、捨て去ることもできない。彼の幸福は彼の生命と同じように彼自身と一つのものである。この幸福をもって彼はあらゆる困難と闘うのである。幸福を武器として闘う者のみが斃(たお)れてもなお幸福である。
三木清と言う哲学者のことの上っ面しか僕は知りません。
それでも、彼が信念を持ってぶれずに生を全うしようとしたことは
ほんの少しですが、わかる気がします。
勉強不足の自分にはかなり難解で苦労しながらちびちびと読んでいます。
それでも、少しはなるほどと納得するような文章に出会うこともあります。
「幸福について」より引用——
幸福は人格である。ひとが外套を脱ぎすてるようにいつでも気楽にほかの幸福は脱ぎすてることのできる者が最も幸福な人である。しかし真の幸福は、彼はこれを捨て去らないし、捨て去ることもできない。彼の幸福は彼の生命と同じように彼自身と一つのものである。この幸福をもって彼はあらゆる困難と闘うのである。幸福を武器として闘う者のみが斃(たお)れてもなお幸福である。
三木清と言う哲学者のことの上っ面しか僕は知りません。
それでも、彼が信念を持ってぶれずに生を全うしようとしたことは
ほんの少しですが、わかる気がします。
Black Boxを読んで
2017年10月26日 読書 コメント (2)
重く、心の奥底から怒りに震える本でした。
作者の伊藤詩織さんの記者会見を見てから、心の奥に引っかかっていた真実。
書店に行き、買うか、どうしようか何度も迷った本でした。
ただの興味本位で読んではならないと、自分自身を戒めました。
この本はご自身のレイプの体験を基にしたノンフィクションです。
部外者の僕が言うのは大変、失礼かもしれませんが、
真実のみで語られた魂のノンフィクションです。
伊藤さんはレイプされた相手を告発する為にこの本を書いたのではありません。
今までレイプにより、多くの人たちが苦しめられてきました。
そして、報われないままに泣き寝入りをしたり、
示談を強制され、虐げられることも多くあったと記されています。
伊藤さんの場合も、相手は逮捕状が出ていたにも関わらず、
警視庁トップからストップがかかり、書類送検されるも不起訴となりました。
何故なのか――
その現実を知って欲しいと願い、そして何よりも、
「どう起こらないようにするのか」
「起こってしまった場合、どうしたら助けを得ることができるのか」という、
未来の話をしたいと、伊藤さんはこの本に綴っています。
ご存知の方も多いかと思いますが、
この件に関して、伊藤さんは司法記者クラブで、
先日は日本外国特派員協会で記者会見を開きました。
今のところ、大手メディアの報道はごくわずかです。
何故なのか――
検察審査会で不起訴相当されたあとも
心ある援助者たちに支えられて、
今も尚、権力を振りかざした大きな闇と闘っています。
世の中には見過ごしてはならない真実がたくさんあります。
是非、一読した頂きたいノンフィクションです。
作者の伊藤詩織さんの記者会見を見てから、心の奥に引っかかっていた真実。
書店に行き、買うか、どうしようか何度も迷った本でした。
ただの興味本位で読んではならないと、自分自身を戒めました。
この本はご自身のレイプの体験を基にしたノンフィクションです。
部外者の僕が言うのは大変、失礼かもしれませんが、
真実のみで語られた魂のノンフィクションです。
伊藤さんはレイプされた相手を告発する為にこの本を書いたのではありません。
今までレイプにより、多くの人たちが苦しめられてきました。
そして、報われないままに泣き寝入りをしたり、
示談を強制され、虐げられることも多くあったと記されています。
伊藤さんの場合も、相手は逮捕状が出ていたにも関わらず、
警視庁トップからストップがかかり、書類送検されるも不起訴となりました。
何故なのか――
その現実を知って欲しいと願い、そして何よりも、
「どう起こらないようにするのか」
「起こってしまった場合、どうしたら助けを得ることができるのか」という、
未来の話をしたいと、伊藤さんはこの本に綴っています。
ご存知の方も多いかと思いますが、
この件に関して、伊藤さんは司法記者クラブで、
先日は日本外国特派員協会で記者会見を開きました。
今のところ、大手メディアの報道はごくわずかです。
何故なのか――
検察審査会で不起訴相当されたあとも
心ある援助者たちに支えられて、
今も尚、権力を振りかざした大きな闇と闘っています。
世の中には見過ごしてはならない真実がたくさんあります。
是非、一読した頂きたいノンフィクションです。
教団X (集英社文庫)
2017年8月22日 読書 コメント (2)
時間があれば、是非読んで欲しい作品です。
分厚く読み応えがあり、ちょっと難しい表現と、
リアルな性描写のある作品で、苦手な人もいるとは思います。
でも――
今の社会へと思いを巡らし、自分の考えを見つめ直し、
尚且つ、それまで信じていたものさえも、
ちょっと待てよと、立ち止まらせてもらえるかもしれません。
本の好き嫌いはもちろん、それぞれです。
でも、僕にとっては久しぶりに心を揺さぶられる本に出会いました。
分厚く読み応えがあり、ちょっと難しい表現と、
リアルな性描写のある作品で、苦手な人もいるとは思います。
でも――
今の社会へと思いを巡らし、自分の考えを見つめ直し、
尚且つ、それまで信じていたものさえも、
ちょっと待てよと、立ち止まらせてもらえるかもしれません。
本の好き嫌いはもちろん、それぞれです。
でも、僕にとっては久しぶりに心を揺さぶられる本に出会いました。
池澤夏樹氏、「双頭の船」
中村文則氏、「掏摸」「王国」
又吉直樹氏、「火花」
今年に入って僕が読んだ本です。
趣味「読書」とは言えないまでも、
本を読むことは好きな方だと思います。
もちろん、人それぞれ好き嫌いもあるし、
興味のあるなしもあるでしょう。
ただ、話題になるならないに関わらず、
読んだあとに余韻が残り、
思いを巡らせてしまう本との出会いは、
やはり嬉しいものです。
今日も川崎までふらふらと歩き、
本屋に立ち寄りました。
何冊か、また読んでみたい本が見つかりました。
中村文則氏、「掏摸」「王国」
又吉直樹氏、「火花」
今年に入って僕が読んだ本です。
趣味「読書」とは言えないまでも、
本を読むことは好きな方だと思います。
もちろん、人それぞれ好き嫌いもあるし、
興味のあるなしもあるでしょう。
ただ、話題になるならないに関わらず、
読んだあとに余韻が残り、
思いを巡らせてしまう本との出会いは、
やはり嬉しいものです。
今日も川崎までふらふらと歩き、
本屋に立ち寄りました。
何冊か、また読んでみたい本が見つかりました。
恩師から「利尻富士」と題された歌集が届いた。
もう20年以上会っていない国語の先生だ。
学生当時、言葉を紡ぎ、味わうことの喜びを先生から教わった。
以来お会いすることはないものの、
年賀状だけはやりとりをしていた。
歌集はそんな先生の穏やかな人柄に溢れていた。
日常の風情から、先生の暮らし振りから、世相から――
「狩野川の堤に摘める菜を漬けて ほろにがき春なつかしむなり」
「わが手作りのアンパンマンのバックには 孫らの宝物きつちり詰まる」
「眼には眼を暴力はかくもむごくあり アメリカ・タリバンの難民を生む」
――歌集「利尻富士」(現代短歌社)・湯川邦子著より
もう20年以上会っていない国語の先生だ。
学生当時、言葉を紡ぎ、味わうことの喜びを先生から教わった。
以来お会いすることはないものの、
年賀状だけはやりとりをしていた。
歌集はそんな先生の穏やかな人柄に溢れていた。
日常の風情から、先生の暮らし振りから、世相から――
「狩野川の堤に摘める菜を漬けて ほろにがき春なつかしむなり」
「わが手作りのアンパンマンのバックには 孫らの宝物きつちり詰まる」
「眼には眼を暴力はかくもむごくあり アメリカ・タリバンの難民を生む」
――歌集「利尻富士」(現代短歌社)・湯川邦子著より
父からの手紙 (光文社文庫)
2013年10月10日 読書
仕事の方はいつものペースなのに、
何かと動き回らなければならない日々を過ごしていた。
そんな日常で細々と読んでいた一冊――
サスペンスでありながら、人情味と情緒溢れる作品。
親子、夫婦、恋人、兄弟……
ちょっと昭和の香りの文章も僕らの世代には良いかもしれない。
心に沁みる作品だった。
何かと動き回らなければならない日々を過ごしていた。
そんな日常で細々と読んでいた一冊――
サスペンスでありながら、人情味と情緒溢れる作品。
親子、夫婦、恋人、兄弟……
ちょっと昭和の香りの文章も僕らの世代には良いかもしれない。
心に沁みる作品だった。
人間と国家――ある政治学徒の回想(上) (岩波新書)
2013年3月9日 読書
現在、ちびちびと読書中の一冊。
何ヶ月前の新聞に著者の特集が出ていた。
勉強不足の自分がおぼろげに思っていたことを、
著者の坂本義和氏は鋭く語ってくれていた。
国家の中にあって、人間とは何なのか。
他者を認めながらも、
アイデンティティを持ち続けることとは……
平和を愛し、真っ向から戦争を拒絶する著者の渾身の叫びが、
優しくも力強く綴られた作品だ。
シンプルな感性が鈍っていないだろうか。
考えることを考えよう。
面倒くさいことから逃げないようにしよう。
人が人であるために。
何ヶ月前の新聞に著者の特集が出ていた。
勉強不足の自分がおぼろげに思っていたことを、
著者の坂本義和氏は鋭く語ってくれていた。
国家の中にあって、人間とは何なのか。
他者を認めながらも、
アイデンティティを持ち続けることとは……
平和を愛し、真っ向から戦争を拒絶する著者の渾身の叫びが、
優しくも力強く綴られた作品だ。
シンプルな感性が鈍っていないだろうか。
考えることを考えよう。
面倒くさいことから逃げないようにしよう。
人が人であるために。
マンガなんてここ数年読んでいなかったが、
最近、子供の影響を受けて数冊読んでいるものがある。
「ジャイアントキリング」に「フットボールネーション」
これは息子たちの影響を受けてのサッカーもの。
「孤高の人」は娘の影響を受けてのクライマーもの。
最近は次男一押しの「宇宙兄弟」。
どのマンガも色々と考えさせてくれるのが面白い。
最近、子供の影響を受けて数冊読んでいるものがある。
「ジャイアントキリング」に「フットボールネーション」
これは息子たちの影響を受けてのサッカーもの。
「孤高の人」は娘の影響を受けてのクライマーもの。
最近は次男一押しの「宇宙兄弟」。
どのマンガも色々と考えさせてくれるのが面白い。
色々と考えさせられた作品でした。
冤罪、死刑制度、父性愛、復讐、心の闇、マスコミ……
読み進めながらテーマとなる言葉たちが、
考えることを止めさせてくれません。
たった一冊の本でも良い。
たった一曲の歌でも良い。
新聞に片隅に小さく記された事件でも良い。
自分の頭で考え、心で思い、
面倒くさがらずに、
自分なりの答えを求め続けること――。
そこには世論調査とは違う答えが、
テレビの訳知り顔人たちとは違う思いが、
きっとあると思います。
冤罪、死刑制度、父性愛、復讐、心の闇、マスコミ……
読み進めながらテーマとなる言葉たちが、
考えることを止めさせてくれません。
たった一冊の本でも良い。
たった一曲の歌でも良い。
新聞に片隅に小さく記された事件でも良い。
自分の頭で考え、心で思い、
面倒くさがらずに、
自分なりの答えを求め続けること――。
そこには世論調査とは違う答えが、
テレビの訳知り顔人たちとは違う思いが、
きっとあると思います。
甲子園が割れた日―松井秀喜5連続敬遠の真実 (新潮文庫)
2010年10月14日 読書 コメント (2)
1992年、夏の星陵対明徳義塾――
僕も大多数の人と同じように、
明徳の監督が指示しただろう5連続敬遠に憤りました。
なぜ正々堂々と勝負をしないのか、
なぜ大人の感覚を高校生に押し付けるのか、
でも、ルール違反じゃない……
色々なことを考えながら、
テレビ画面に釘付けになったことを今でも覚えています。
この作品はその時の当事者たちへの取材の結晶です。
この試合の主役、脇役、指導者たち。
作者の情熱には圧倒されました。
それぞれの声に耳を傾け、
自分なりにスポーツと言うものを考えると、
白黒だけでは片付けられない世の中が見えてくるようです。
僕も大多数の人と同じように、
明徳の監督が指示しただろう5連続敬遠に憤りました。
なぜ正々堂々と勝負をしないのか、
なぜ大人の感覚を高校生に押し付けるのか、
でも、ルール違反じゃない……
色々なことを考えながら、
テレビ画面に釘付けになったことを今でも覚えています。
この作品はその時の当事者たちへの取材の結晶です。
この試合の主役、脇役、指導者たち。
作者の情熱には圧倒されました。
それぞれの声に耳を傾け、
自分なりにスポーツと言うものを考えると、
白黒だけでは片付けられない世の中が見えてくるようです。
告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)
2010年10月9日 読書 コメント (2)
読むか、どうしようか、
さんざん迷った作品でした。
きっかけは次男が映画を観たこと。
それなら俺は本を読んでやると対抗したのですが……
本当に大事なものは、大切な人は、
自分なのか、他人なのか、
友達って何、親って何、
自分に素直に生きることって――
読み方によって、全く救いのないままに、
ラストを迎えてしまうかもしれません。
それでも、人が生きることの意味を、
鋭く問いかけてくれる作品だと思います。
さんざん迷った作品でした。
きっかけは次男が映画を観たこと。
それなら俺は本を読んでやると対抗したのですが……
本当に大事なものは、大切な人は、
自分なのか、他人なのか、
友達って何、親って何、
自分に素直に生きることって――
読み方によって、全く救いのないままに、
ラストを迎えてしまうかもしれません。
それでも、人が生きることの意味を、
鋭く問いかけてくれる作品だと思います。
銀河のワールドカップ (集英社文庫)
2010年10月5日 読書 コメント (2)
「スポーツが好きならこれがいいんじゃないですか?」
偶然、知り合った作者ご本人から薦められた一冊。
サッカーが好きな方ならその奇想天外なストーリーに唸ると思います。
だからと言って、非現実的な世界ではなく、
作者の川端さんのサッカーや子供たちへの愛に満ちた作品です。
大人が忘れてしまったスポーツのあり方も教えてくれるような、
小説だからこその楽しみ満載の作品です。
ちなみに作者の川端さんはサッカーへの造詣が非常に深くて、
今年のワールドカップも現地に足を運び、
「Number」に連載をされていたほどです。
そんな訳で、この夏と秋に読んだ本も少しご紹介していこうと思います。
偶然、知り合った作者ご本人から薦められた一冊。
サッカーが好きな方ならその奇想天外なストーリーに唸ると思います。
だからと言って、非現実的な世界ではなく、
作者の川端さんのサッカーや子供たちへの愛に満ちた作品です。
大人が忘れてしまったスポーツのあり方も教えてくれるような、
小説だからこその楽しみ満載の作品です。
ちなみに作者の川端さんはサッカーへの造詣が非常に深くて、
今年のワールドカップも現地に足を運び、
「Number」に連載をされていたほどです。
そんな訳で、この夏と秋に読んだ本も少しご紹介していこうと思います。
ジムナジウムのスーパーマンを訪ねて・3
2009年11月19日 読書あれから12日後――。
仕事を終え、所用で駅までクルマを走らせていた。
用事を済ませ、駅前の商店街を抜け、広い通りに出た。
その通り沿いには菓子メーカーの工場がある。
エンゼル・スカッシュクラブ。
日本で初めての民間のスカッシュコートが、かつてその敷地内にあった。
坂本さんはそこでスカッシュと出会い、
その後、日本のスカッシュ界のパイオニアとなる。
残念ながらボーリング場の一角にあったスカッシュコートは、
すでに閉鎖されていて、建物だけがひっそりと残っている。
今頃、坂本さんはどうしているだろう――
思いを廻らせていると、
見覚えのある白いセダンがすぐ前を走っているのに気がついた。
まさか――
ちょうど「エンゼル・スカッシュクラブ」があったあたり、
白いセダンはハザードランプを点しながら路肩に止まった。
追い越す時、運転席を一瞬見た。
まさか、だった。
坂本さんはセールスマンとしての職責を全うした。
しかし、スカッシュ選手としての引退はまだ口にしていない。
【終わり】
仕事を終え、所用で駅までクルマを走らせていた。
用事を済ませ、駅前の商店街を抜け、広い通りに出た。
その通り沿いには菓子メーカーの工場がある。
エンゼル・スカッシュクラブ。
日本で初めての民間のスカッシュコートが、かつてその敷地内にあった。
坂本さんはそこでスカッシュと出会い、
その後、日本のスカッシュ界のパイオニアとなる。
残念ながらボーリング場の一角にあったスカッシュコートは、
すでに閉鎖されていて、建物だけがひっそりと残っている。
今頃、坂本さんはどうしているだろう――
思いを廻らせていると、
見覚えのある白いセダンがすぐ前を走っているのに気がついた。
まさか――
ちょうど「エンゼル・スカッシュクラブ」があったあたり、
白いセダンはハザードランプを点しながら路肩に止まった。
追い越す時、運転席を一瞬見た。
まさか、だった。
坂本さんはセールスマンとしての職責を全うした。
しかし、スカッシュ選手としての引退はまだ口にしていない。
【終わり】
ジムナジウムのスーパーマンを訪ねて・2
2009年11月13日 読書 コメント (2)「熱っ!」
テーブルに備え付けのIHコンロを坂本さんが触った。
娘が本気で驚き、坂本さんが大笑いする。
いつもそうだ。坂本さんは人を笑わせ、自分も一緒に楽しんでいる。
クルマを預けた後、僕と娘は坂本さんに昼飯を誘われた。
お店の筋向いの日本料理の店、久しぶりに坂本節が聞かれる。
スカッシュの話、僕の子供たちの話、クルマの話。
箸を進めながら、坂本さんとの会話を楽しんだ。
時折、娘をからかい穏やかな眼差しを向ける。
【坂本聖二。肩書きはこうだ――
トヨタカローラ神奈川株式会社 鶴見営業所営業課 係長。】
作品の中の肩書きから約30年が経った。
でも、その肩書きにほとんど変化はない。
63歳を迎える現在も若手や中堅と同じようにクルマを売り続けている。
出世には目もくれず、スカッシュボールを追い続け、
クルマを売り切った坂本さん。
本物のオンリーワンとは彼のことを言うのかもしれない。
「昔の平凡パンチが出てきてさ……昔の僕、笑っちゃうよ」
チャンピオンだった頃、坂本さんは様々な取材に追われた。
そのひとつ、今は廃刊となった週刊誌を見せてくれた。
娘がニヤニヤしている。
そこには髪の毛がふさふさで、
引き締まった肉体の若い坂本さんが写っていた。
「全然、違うよね」
また、娘がニヤニヤしている。
「……面影はありますよ」
週刊誌の中のスカッシュ選手も、目の前のベテランセールスマンも、
瞳の奥に湛える優しさは全く変わっていない。
【つづく】
テーブルに備え付けのIHコンロを坂本さんが触った。
娘が本気で驚き、坂本さんが大笑いする。
いつもそうだ。坂本さんは人を笑わせ、自分も一緒に楽しんでいる。
クルマを預けた後、僕と娘は坂本さんに昼飯を誘われた。
お店の筋向いの日本料理の店、久しぶりに坂本節が聞かれる。
スカッシュの話、僕の子供たちの話、クルマの話。
箸を進めながら、坂本さんとの会話を楽しんだ。
時折、娘をからかい穏やかな眼差しを向ける。
【坂本聖二。肩書きはこうだ――
トヨタカローラ神奈川株式会社 鶴見営業所営業課 係長。】
作品の中の肩書きから約30年が経った。
でも、その肩書きにほとんど変化はない。
63歳を迎える現在も若手や中堅と同じようにクルマを売り続けている。
出世には目もくれず、スカッシュボールを追い続け、
クルマを売り切った坂本さん。
本物のオンリーワンとは彼のことを言うのかもしれない。
「昔の平凡パンチが出てきてさ……昔の僕、笑っちゃうよ」
チャンピオンだった頃、坂本さんは様々な取材に追われた。
そのひとつ、今は廃刊となった週刊誌を見せてくれた。
娘がニヤニヤしている。
そこには髪の毛がふさふさで、
引き締まった肉体の若い坂本さんが写っていた。
「全然、違うよね」
また、娘がニヤニヤしている。
「……面影はありますよ」
週刊誌の中のスカッシュ選手も、目の前のベテランセールスマンも、
瞳の奥に湛える優しさは全く変わっていない。
【つづく】
ジムナジウムのスーパーマンを訪ねて・1
2009年11月12日 読書
【彼にとっては、クルマのセールス台数を増やすのと同じくらい、
自分の連勝記録を伸ばすのも大切だった。】
――「スローカーブを、もう一球」山際淳司著、角川文庫、
「ジムナジウムのスーパーマン」より
助手席に娘を乗せ、横浜新道をのんびりと走らせながら、
「ジムナジウムのスーパーマン」を思い出していた。
スカッシュの神様こと坂本聖二さんはカーセールスの仕事をやり続けながら、
スカッシュにも全力疾走だった。
その坂本さんが定年前、最後の1年を過ごすことになった藤沢の販売店に、
僕たちはクルマを走らせていた。
10月25日、坂本さんの退職の日は1週間後の11月1日だ。
その3日前、坂本さんは体の手入れにうちに来た。
「今月、点検だよね……でも、遠いから無理しなくていいよ」
その言葉の本心を僕は百も承知だった。
鶴見の販売店で偶然出会ってから12年――
もう、セールスマンとしての坂本さんには会えないことになる。
坂本さんからはたくさんのことを学ばせてもらった。
スカッシュも教えてもらった。
頂点を極めた男の誇りと人を大切にする心に触れることもできた。
翌日、僕は藤沢の店にクルマの点検の予約をいれた。
【つづく】
自分の連勝記録を伸ばすのも大切だった。】
――「スローカーブを、もう一球」山際淳司著、角川文庫、
「ジムナジウムのスーパーマン」より
助手席に娘を乗せ、横浜新道をのんびりと走らせながら、
「ジムナジウムのスーパーマン」を思い出していた。
スカッシュの神様こと坂本聖二さんはカーセールスの仕事をやり続けながら、
スカッシュにも全力疾走だった。
その坂本さんが定年前、最後の1年を過ごすことになった藤沢の販売店に、
僕たちはクルマを走らせていた。
10月25日、坂本さんの退職の日は1週間後の11月1日だ。
その3日前、坂本さんは体の手入れにうちに来た。
「今月、点検だよね……でも、遠いから無理しなくていいよ」
その言葉の本心を僕は百も承知だった。
鶴見の販売店で偶然出会ってから12年――
もう、セールスマンとしての坂本さんには会えないことになる。
坂本さんからはたくさんのことを学ばせてもらった。
スカッシュも教えてもらった。
頂点を極めた男の誇りと人を大切にする心に触れることもできた。
翌日、僕は藤沢の店にクルマの点検の予約をいれた。
【つづく】
「星新一のドラマ、今度いつやるのかな?」
「星新一なら本をたくさん出しているぞ」
「うそ!」
少し前にテレビで星新一の原作をもとにしたドラマをやっていました。
それをたまたま見ていた次男と僕の会話。
「読んでみるか」
「うん」
というわけで漫画ばかり読んでいた次男が、
珍しくトイレに持ち込んで読みふけっている一冊です(笑)。
星新一を勧めた本人は実はまだ一冊も読んだことはなく、
「ショートショートならやっぱり阿刀田高だよな」と
知ったかぶりをしているのでした(笑)。
「星新一なら本をたくさん出しているぞ」
「うそ!」
少し前にテレビで星新一の原作をもとにしたドラマをやっていました。
それをたまたま見ていた次男と僕の会話。
「読んでみるか」
「うん」
というわけで漫画ばかり読んでいた次男が、
珍しくトイレに持ち込んで読みふけっている一冊です(笑)。
星新一を勧めた本人は実はまだ一冊も読んだことはなく、
「ショートショートならやっぱり阿刀田高だよな」と
知ったかぶりをしているのでした(笑)。