「キュッ」
床をこするシューズの音がする。
佐野のフットワークはまるで床を這うようだ。
下半身は安定し、上下動が少ない。
大殿筋が飛び出すように発達した尻に
スピードスケートの選手のような太腿、
無駄な贅肉の一切ない佐野の体は
スカッシュをする為に研ぎ澄まされている。

――「挑戦者―スカッシュプレーヤー佐野公彦の1年―」より
  (第3回スポーツライター新人賞出品作品)

土曜の夜、みなとみらいのファミレス――。
久しぶり会った佐野さんは相変わらずの丸刈りに、
相変わらずの笑顔でした。

「東京オリンピックになって、スカッシュが正式種目になれば最高ですね」

佐野さんは現役のスカッシュ選手。
今はナショナルチームのコーチとしても、
日本代表やジュニアの育成にも全力を注いでいます。

仕事もスカッシュのインストラクター。
マイナーなスカッシュを如何にして広め、
世界を舞台に戦える選手を如何にして育てるか、
彼の頭の中はそのことで満たされています。

ただ――
彼と食事をし、話をしながら、
彼が醸し出す空気が昔のそれと少し違うのを僕は感じました。
ゆとり、深み、言葉で例えればそんな感じ。

それでも――
「若手に嫌がられる選手でいたいですね」

今秋の全日本、久しぶりに彼の勇姿を見に行こうと思います。

コメント

naochan
2009年3月30日8:51

人の成長って、そんな感じで伝わるのかもしれませんね。

何となく、私も感じました。

スカッシュ選手の佐野さんですね。インプット

羽生遊
2009年3月30日22:06

naochanへ
全日本で2回優勝し、日本代表の一員として活躍してきた佐野さんも、
競技者としてはベテランになってきたのかも知れません。
それでもどこまでも真っ直ぐに全身全霊でスカッシュに取り組む姿勢は、
ずっと変わりなく、数年前に取材した佐野さんのままでした。

そんな中、先日会った佐野さんにはトップアスリートの厳しさと、
人ととしての温もりを感じました。
これは人の上に立つ人間として、大切なものだと思います。

人と会い、見習うことってたくさんありますね!

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