静寂と岩登り
西武秩父駅から車で約40分。
道は細くくねりながら、山の奥の目的地へと辿り着いた。
柴崎ロック――
知る人ぞ知る岩場らしい。

子ども3人にそれぞれの親3人。
インストラクターの福山先生とその助手役の女子大生のYさん。
8人で急斜面を下り、樹木に囲まれた石灰岩の岩場に立つ。

僕らの他に人はいない。
無駄な音は一切ない。
水のせせらぎ、樹木の葉に風が触れる音、そして子ども達の声。

順々に子ども達がただ岩を登る。

クライミングは至ってシンプルなスポーツだ。
それぞれが決めた課題を登ればいいだけ。
勿論、上手く登れないこともある。
それを子どもの頭で判断し、課題の攻略を目指す。
そこがシンプルゆえに難しく、またそれがクライミングの醍醐味でもある。

福山先生は多くの助言はしない。
できうる限り、子ども達の自主的な判断に委ねている。
ロープを握るYさんも、温かく子ども達を励ましている。
親の存在は岩場ではエキストラに過ぎない。

ふと、沈黙が訪れる。
気がつけば、陽が傾き始めていた。

コメント

naochan
2009年4月6日18:14

写真がその場面ですね

し~んとした空気感まで漂ってきそうです。
見守る事の難しさですね。

エキストラに徹している親さんの視線が温かいです

羽生遊
2009年4月7日23:09

naochanへ
静まり返った岩場で子ども達がひたすら岩に取り付く姿は、
ただ見ているだけでも気持ちが良いものです。
naochanさんのご指摘の通り、親達は皆さん穏やかに見守っています。

自然の歯車の中で、人の存在は小さいけれど確実に光っています。

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