ベンチに戻るとコーチが肩を叩いて、労ってくれた。
ハーフにも満たない時間だったが、
ケンは今までに感じたことのない疲れを感じていた。

後半、仲間は最後まで諦めずに闘い続けている。
自分にできることは応援するだけだ。
相手チームも最後まで攻撃の手を緩めない。
終了間際、ダメ押しの1点を奪われ、長いホイッスルが3回鳴った。

へたり込み、泣きじゃくり、
目標への扉が閉まった――。

家に帰るとすぐにケンは父母と試合の話をした。
そんなことは珍しかった。
不思議とすっきりしていた。

春の大会の敗戦後、チームはまとまりを失い、気持ちもバラバラだった。
でも、この秋の大会の敗戦後は確かに違う。
みんな次に向う眼差しがあった。

チームにはもうひとつだけ大会が待っていた。
横浜市のトーナメント。
この仲間との時間もいよいよ終わりが近づいてきた。

【終わり】

コメント

メイ
2009年10月26日20:20

羽生遊さん こんばんは^^

こうして少しずつ大人になっていくんですね。
ケン君の姿の向こうに、爽やかな秋空が広がっているのが見えるようです^^

羽生遊さんもお疲れ様でした。

羽生遊
2009年10月27日22:58

メイさんへ
温かいコメント、ありがとうございます。
今回はケンの視点で書いてみようと思いました。
兄の背中を追って始めたサッカー、
このクラブチームでの経験は素晴らしいものになりました。

先日、久しぶりにケンと一緒にサッカーをやりました。
勿論、相手にはなりもしなかったのですが(笑)、
その成長を体で感じることができました。

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