「俺はダメだった……」と言うケンの第一声に、
「ピッチに立てない仲間もいるんだぞ」と言葉が滑った。

言った傍からもっと気の利いた言葉があったはずだと後悔した。

チームはブロック優勝の県ベスト8。
昨年、先輩達が惜敗したチームへの雪辱を果たし、
春の大会に向けてのシード権も獲得した。
もっと素直に喜んでやって良かったはずだった。

昔のこと――

ケンがまだ小学4年生の時、
ある招待試合で優秀選手に選ばれた。
首から提げたメダルを嬉しそうに見せに来たケンに
僕はこう言ってしまった。

「これって、みんなで獲ったメダルだよな」

一瞬顔を曇らせたケンはすぐに「うん」と頷いた。
その夜、そのことを妻に告げると、
「なんで素直に褒めてあげられなかったの」とたしなめられた。

あの日のことが頭をよぎった――

ひとしきり試合の話を終え、息子が制服を脱いだ。
背中がひと回り大きくなっている。
浅黒く日焼けした顔は心地良い疲れに包まれているようだった。

コメント

naochan
2011年1月26日11:24

う~ん、複雑ですよね。

息子の事、人一倍、活躍が嬉しいくせに
より高い精神性を求めてしまう

父親と母親の違いでも良いかな?と私は思っています。

男の人の視野の広さに、敵わないと思ったときがありましたから。

羽生遊
2011年1月27日17:14

naochanへ
何故か次男が4年生の時もことは、
ずっと心の中にあって
今回、ちょっと思い出してしまったわけです。

自分を省みれば、子供に偉そうなことを
いえるわけでもないのに、
ついつい言ってしまってました(笑)

母親と父親の違いでいいんですよね……

高校生になり次男はそれなりに逞しくなっているようです。
黙っていても、子は成長するものですね。

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