リョウが高校生になった弟の試合に来るのは初めてだった。
僕が長男と一緒にケンの試合を見るのも初めてだ。

幼い頃、ケンと一緒に度々兄の試合を応援した。
リョウが出ていないと「何でリョウ君を出さないんだ」と
口を尖がらせていたものだ。

小学校時代は同じチームに所属し、
中学からは兄と弟は少し違うサッカーの関わり方をした。
高校になって、それぞれ違う高校の部活を経て、
兄は専門学校でもサッカーを楽しんでいる。

気付けば時は確実に流れ、サッカー少年は大人へと成長しつつある。

「応援、凄いね」
「ああ、やっぱり選手権だよな」

両校の応援に加えて、高校サッカーファンもこの場に集っているようだ。
グラウンドを取り囲むように人垣ができている。

やっぱり高校サッカーはいいな――

後半を前にした静かなピッチを見ながらしみじみと思う。
汗まみれになって、放課後のグラウンドを走り、
ボールを追い、夢を追い、ひたすら走る。

みんな悔いなくやれ、思い切りやれ。
勝ち負けよりも大切にものは、絶対にあるのだから。

【つづく】

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