秋も深まった土曜の夜――
東京メトロの小伝馬町駅近くのカフェ。

カメラマンのノジョー君こと高木俊幸氏主催のトークイベントが
会場がほぼ満席になる聴衆を集めて開催された。

ゲストはノジョー君が度重なる福島の取材で知り合ったKさん。
現在、ご自宅は震災による福島原発の事故のあと、
「帰還困難区域」に指定され、避難生活を強いられている。

Kさんのような人たちは、たまたま原発の近郊に住んでいたがために、
故郷から遠く離れて暮らさなくてはならなくなった。
今は戻る家を失い、大切な仲間との日常も失ってしまった。

もし、自分の住む地域が明日から住めなくなってしまったら――

到底、自分には実感できるものではないが、
福島の約15万人の人たちが今も尚、その状況に置かれている。

震災後、Kさんはまず50km離れた奥さんの実家に避難した。
数日後の夜、ふとチェルノブイリの事故に思いを馳せた。

もしかして、もう帰れないのでは――

思い立って奥さんと2人、真夜中の道へと車を走らせる。

「アルバムを取りに帰ろう」

家には子供たち、家族、地域の思い出が、
ぎっしりと詰まったアルバムがたくさんある。
Kさんはどうしてもそれを手許に取り戻したかった。

トークイベントはノジョー君の現地での写真と共に、
僕たちに改めて考える機会を与えてくれた。

2時間半に及ぶ熱い時間を過ごし、カフェの外に出る。
都会の明かりがやけに眩しく光っていた。

※Last Diary ・高木俊幸 Toshiyuki "Nojyo" Takagi
http://waterfront1881.air-nifty.com/nojyo1881/

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