5勝1敗1分、勝ち点16、得失点差19――。
江ノ島フリッパーズはグループ3位でリーグ戦を終え、昇格戦への参戦は惜しくも叶わなかった。

11月24日、結果として最終戦となってしまった試合は、お互いが昇格戦を賭けたビッグゲームとなった。
前半、硬さの目立つフリッパーズは相手の勢いに押される形で3点を失ってしまう。でも、ここからフリッパーズは猛烈な追い上げを見せる。引き分け以上が目標に辿り着く為の最低条件の中、攻守にわたってチーム一丸となり、同点に追いついた。
しかし、サッカーの神様はフリッパーズには振り向いてくれなかった。終了間際に勝ち越しゴールを許し、フリッパーズの初シーズンの全てが終った。
 
実は後日談がある。このあと、フリッパーズにはもう1試合あるはずたった。昇格戦に関わるチームとの兼ね合いでその勝敗如何によって、わずかではあるがグループ2位の可能性が残されていた。それまで使っていたグラウンドは日程的な利用制限によって使えなかった。試合消化の期限まで残り2週間、フリッパーズの選手と関係者は相手チームとの試合交渉、グラウンドの確保に奔走した。
ここでもフリッパーズは一丸となった。苦心の末にどうにかグラウンドを確保し、あとは相手次第と言うところまで漕ぎ着けたが、再びサッカーの神様は振り向いてくれなかった。ノーゲーム、残念ながら最終戦は幻の試合となってしまった。
 
今シーズン、僕は縁あって、フリッパーズの全ての公式戦を見ることができた。こんな結末は予想もしていなかったが、決して恵まれた環境ではなかった選手や関係者たちの激動の1年を思うと、心から拍手を送られずにはいられない。
僕は自分の子供がサッカーと言うスポーツを選んだ幼い頃から、フィールドを走るたくさんの子供たちを見つめてきた。時に勝敗の無常さを憂い、大人の論理を嘆き、それでもボールを追い続ける子供たちに、自分なりの声援を送って来たつもりである。
その後も中学高校と子供の成長に伴いサッカーを見る機会に触れ、フリッパーズと言う無名の新参チームと出会うことになった。そこで見たものは、「喜怒哀楽をみんなで共有する」と言う当たり前のようで、なかなか見ることができないものだった。

行き過ぎた実力主義や勝利至上主義の為に大好きなサッカーから離れてしまう子供たちが大勢いる。楽しむことと勝つことは共有できないのか、負けてしまうことがそんなに悪いことなのか、何でみんなでもっと楽しまないのか、溢れる疑問に自問自答しながら、ずっとサッカーを見つめていたような気がする。
「江ノ島フリッパーズ」はそんな疑問に明快な解答を出してくれた。誰の為のサッカーなのか、何の為のスポーツなのか、汗と笑顔をふりまき、チームのメンバー分け隔てなく、疾走する彼らを見ていると、長年抱えていた自分の疑問に終止符を打ってくれるようだった。

楽しんで勝つ――

来季、フリッパーズはどこへと向うのだろう。スタイルを貫き、目標を達成する為の障壁は大きい。だけど彼らならきっとできるはずだ。目標と期待を胸に、フリッパーズは2年目に向けてのスタートを切った。

コメント

naochan
2013年12月27日17:33

フリッパーズの健闘を称えます。

1年目で、すごい成績でしたね。
そして、気持ちが一つになるパワーを感じました。

楽しんで勝つ――転じて

楽しんで生きる・・・・いただきました。


スポーツの神髄だと思いました。

羽生遊
2013年12月27日23:27

naochanへ
ありがとうございます。
名もなきサッカーチームへの温かいエールは、
来季に向けての大きな力になると思います。

初年度、彼らが目指した目標には辿り着けませんでしたが、
堂々と胸を張れるシーズンだったと思います。

楽しんで生きる――

こちらこそ、いただきました!

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